奈良県二上山周辺の野鳥観察

もうひとつの父の姿

  
\ この記事を共有 /
もうひとつの父の姿

父に似た、あの入居者さん

ご縁があって、夜間勤務で入らせていただいている高齢者施設があります。そこにいらっしゃる男性の入居者さんの中に、たまに強い帰宅願望が出る方がいます。お盆や年末年始になると決まってひと騒動が起きます。お部屋の荷物をすべてまとめ、それを背負って施設から出て行こうとされるのです。無理に止めようとするとご立腹され、落ち着くまでにかなりの時間を要します。

初めてお会いしたとき、父に似ていると感じました。見た目も行動もまったく違うのですが、根っこにある頑固な性分が、よく似ていると思ったのです。それ以来、その方が不穏な状態になったと聞くと、どうしても他人事とは思えず、許していただけるならとことん付き合って差し上げたいという気持ちになりました。

変化に気づいた今年のお盆

ところが、今年のお盆は違いました。あれほど毎年繰り返されていた帰宅願望が、まったく出なかったのです。

不穏な状態が減ることは、本来であれば喜ばしいことのはずです。ご本人にとっても、施設の職員さんにとっても、落ち着いた日々を過ごせるのは良いことです。

けれど、以前に比べてADL(日常生活動作)も少し落ちてきたように感じられ、素直に喜べない自分がいました。今の生活に馴染んでくださったのか、それとも活気そのものが失われてきているのか。父と重ねて見てしまうだけに、その違いがとても気になってしまうのです。

おわりに

帰宅願望は、ご本人にとって「まだ帰る場所がある」という強い意思の表れだったのかもしれません。それが静かになったとき、周囲は安堵する一方で、何かが少しずつ手放されていくような寂しさも感じます。

同じような変化を見守っていらっしゃる方は、少なくないのではないでしょうか。

コメント

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です