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介護施設内での転倒による骨折 ― 起こりやすい部位と、その後の生活への影響

  
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介護施設内での転倒による骨折 ― 起こりやすい部位と、その後の生活への影...

父の事から少し離れますが、今日は介護施設内での転倒・骨折によるその後の生活への影響について書いてみたいと思います。
高齢者の介護施設では、日々の生活の中で「転倒」が起こりやすい環境が数多く存在します。手すりや見守りなどの対策がとられていても、加齢による筋力低下やバランス能力の低下、骨の脆弱化(骨粗しょう症)などが重なり、転倒そのものを完全にゼロにすることは難しいのが現実だと思います。
そして転倒が厄介なのは、単なる「転んだ」で終わらず、骨折という形で心身に大きな影響を残してしまうことがある点です。この記事では、介護施設内で高齢者が転倒した際にどの部位を骨折しやすいのか、そして骨折によってその方の生活や心身にどのような変化が起こるのかを整理してみます

施設内で転倒が起こりやすい場面

介護度によって転倒の起こりやすい状況には違いがあると言われています。要介護度が重い方はトイレ移動時、比較的軽い方は体操やレクリエーションの最中、立ち上がり動作の際に転倒が多いという調査結果もあります。
また、東京消防庁の救急搬送データでは、居室やトイレ、廊下といった生活動線上での転倒が多いことが報告されています。
つまり、特別な場面だけでなく「普段の生活動作の延長」で転倒は起こりやすいということです。

高齢者が骨折しやすい4つの部位

高齢者の骨折は、若い人のような強い衝撃によるものではなく、骨粗しょう症で弱くなった骨に軽い力が加わるだけで起こる「脆弱性骨折」であることがほとんどです。中でも代表的なのが、次の4部位です。

1. 大腿骨近位部骨折(だいたいこつきんいぶこっせつ)

太もものつけ根、股関節に近い部分の骨折です。転倒して尻もちをついたり、横に倒れて足のつけ根を強打したりすることで起こります。歩行や立ち座りに直結する部位のため、骨折すると多くの場合手術が必要になり、その後の生活への影響がもっとも大きい骨折のひとつとされています。

2. 胸腰椎圧迫骨折(きょうようついあっぱくこっせつ)

背骨(特に胸椎の下部から腰椎の上部にかけて)がつぶれるように骨折するものです。転倒による衝撃だけでなく、骨がもろくなっていると、くしゃみや前かがみの動作など、日常のちょっとした負荷だけで自然に骨折してしまうこともあります。背中が丸くなる「円背(えんぱい)」の原因にもなります。

3. 上腕骨近位部骨折(じょうわんこつきんいぶこっせつ)

腕のつけ根、肩に近い部分の骨折です。転倒した際にとっさに肘や肩をついたときの間接的な力によって起こることが多く、骨粗しょう症のある高齢の女性に多く見られます。

4. 橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)

手首の骨折です。転倒時にとっさに手をついて体を支えようとした結果、手首に強い力がかかって起こります。4部位の中では比較的軽度で済むこともありますが、利き手側の場合は日常動作への影響が出やすい骨折です。

これらの部位に共通するのは、「とっさに手や足をついて体を支えようとした時」に起こりやすいという点です。とっさの防御反応が、かえって骨折につながってしまう構造になっています。

骨折がその方の心身にもたらす変化

骨折そのものの痛みや治療はもちろんですが、高齢者にとって骨折が深刻なのは、そこから連鎖的にさまざまな変化が起こりやすいことです。

身体機能の低下(廃用症候群)

骨折による安静や入院で体を動かさない期間が続くと、筋力やバランス能力が急速に低下します。これを「廃用症候群」と呼びます。若い人であれば数週間で回復する体力も、高齢者の場合は骨折前の状態まで戻らないことが少なくありません。「骨折をきっかけに歩けなくなった」というケースは、決して珍しいことではないのです。

要介護度への影響

国の調査では、骨折・転倒が原因で新たに介護が必要な状態になる高齢者の割合は、認知症・脳血管疾患・高齢による衰弱に次いで上位を占めています。骨折がそれまで自立していた生活に区切りをつけ、介護度が上がるきっかけになることは決して少なくありません。

認知機能への影響

骨折による入院や環境の変化は、高齢者にとって大きなストレスとなり、せん妄(一時的な混乱状態)や認知機能の低下を引き起こすことがあります。特に入院という「いつもと違う環境」は、認知症の有無にかかわらず高齢者の見当識を乱しやすいと言われています。

心理的な変化 ― 「転ぶことへの恐怖」

骨折を経験すると、「また転ぶのではないか」という不安から、動くこと自体に消極的になる方が多くいます。これは「転倒恐怖症候群」とも呼ばれ、活動量の低下がさらなる筋力低下を招き、結果的に転倒リスクを高めてしまうという悪循環に陥ることがあります。本人の自信や意欲の低下にもつながりやすい変化です。

生活範囲・人との関わりの変化

歩行が難しくなることで、それまで参加できていたレクリエーションや食堂での食事、他の入居者との交流の機会が減ってしまうこともあります。身体的な制約が、そのまま社会的なつながりの縮小につながってしまう点も見過ごせません。

おわりに

介護施設内での転倒・骨折は、どれだけ注意を払っていても完全に防ぎきれるものではありません。だからこそ、「骨折がその方の生活にどのような変化をもたらしうるか」をあらかじめ知っておくことは、家族や介護に携わる方にとって大きな意味を持ちます。

骨折後は、身体機能の回復だけでなく、気持ちの落ち込みや生活範囲の縮小といった変化にも目を向け、本人のペースに合わせたリハビリや声掛けを続けていくことが、その後の生活の質を保つうえで大切になります。

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